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行事予定

4月期 加賀三策塾

下記の通り4月期加賀・三策塾を開催します。

日時:令和4年4月3日(日)10:30~12:30

場所:石川県庁平和町分室B館1階会議室(参加者が少ない場合は事務所)、オンライン

内容:症例検討会「肩関節痛の2例」

担当:鍼灸なかだ治療院 中田和宏

単位:2

参加費:無料

※会場参加希望の方は3月28日(月)までに事務所へ旨お知らせください。

ミーティングルームは以下の通り

info@ishikawa-shinkyu.or.jpさんがあなたを予約されたZoomミーティングに招待しています。
トピック: 令和4年度4月期加賀・三策塾
時間: 2022年4月3日 10:00 大阪、札幌、東京
Zoomミーティングに参加する
https://zoom.us/j/98950927055?pwd=TlAxRDgrTkhuTUFjd3RNQTlrZ3pRUT09
ミーティングID: 989 5092 7055
パスコード: 619065

肩関節痛の2例

鍼灸なかだ治療院 中田和宏

〇はじめに

 中高年で肩関節の痛みを訴えると五十肩を考えます。いわゆる五十肩は鍼灸臨床でよく経験するものの一つです。私は実のところ五十肩は大変苦手な病気です。それは五十肩で当院を受診される患者の多くが、すでに病院や整体や接骨院などをいくつが回ってきてこじれてしまっているものや、仕事が忙しいからと放置している方が多いからです。適切な処置を早期にすることでちゃっちゃと良くなるものが、こじれることで苦悩の連続を経験します。

 今回、早期に適切な処置ができたことでちゃっちゃと良くなった症例1と、その処置のヒントになったこじれた症例2を紹介します。

〇症例1「五十肩ではないけれど五十肩になったかもしれない一例」

▼53歳、女性、職業:自営業(デスクワーク)

▼初診:2022年2月16日

▼主訴:左肩関節前面から上腕にかけての痛み

▼現病歴:左手を伸ばして発症した。以来安静時と動作時に痛みがある。腕を少し上げようとすると痛む。また半分ぐらいあげたところでも痛みがでる。夜間痛はない。一日中PC作業をしていることが多い。運動はしていない。

▼既往歴、家族歴:特記なし

▼身体所見:身長153㎝、体重56kg(1年前は59kg)、血圧119/77mmHg、脈拍77/分(整脈)

▼生活症状:特記なし

▼所見:左肩関節の可動域制限はないが屈曲と外転で約30度から90度の範囲で痛みを訴えた。90度~180度の範囲では痛みはない。内旋痛(+)。頚髄や頸部根症状を疑う所見なし。座位で左上前腸骨棘内側2cm部に圧痛(+)押圧で肩関節屈曲・外転時の動作痛消失、トーマステストで左ひざ屈曲1横指、頭板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋、大胸筋、三角筋前部線維、棘上筋に軽度の筋緊張と圧痛を認めた。背部は左Th7~Th12棘突起直傍に硬結を認めた。

▼病態把握:①棘上筋痛症、②慢性の首や肩のこり、③腸腰筋痛症、④広背筋痛症

▼鍼灸施術方針:a.山正NEOディスポ鍼SPタイプ39mmφ0.20mm、b.ファロス職人鍼C100タイプ90mmφ0.24mmを使用

①、②、④は圧痛部と硬結を触知した部位にaで置鍼、⓷は志室外方からやや内側に向けてbで深刺置鍼。

▼経過:1診目(初診)上記の通り施術、VAS10→7。2診目:痛みは軽減したが残存、同様に施術しVAS10→3。3診目:VAS10→0、略治。

〇症例2「ヨギボーで五十肩になった一例」

▼53歳、女性、職業:自営業(デスクワーク)

▼初診:2021年6月16日

▼主訴:右肩痛

▼現病歴:2カ月前から発症。多忙につき放置。増悪し当院受診。安静時痛、夜間痛、動作痛がある。

▼既往歴:①2005年頃から肩こり、腰痛で当院受診していたが改善見られず顔つきがやばくなってきたので金沢医科大学病院神田教授に紹介したところ、うつ状態、PTSDの診断で内服、鍼灸併用で寛解。②2014年子宮筋腫手術、その後胆石が見つかり経過観察中。③現在高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病で内服治療中。

▼家族歴:特記なし

▼身体所見:身長154cm、体重ナイショ(肥満)、血圧140/82mmHg、脈拍72回/分(整脈)

▼生活症状:特記なし

▼所見:屈曲150度、外転90度、内旋動作痛あり不可、外旋50度、伸展45度、大胸筋、僧帽筋、菱形筋に筋緊張あり。ドロップアームテスト(-)。

▼病態把握:棘下筋腱板炎軽度とそれをかばって発症した肩関節周囲の筋緊張由来の肩関節痛と可動域制限と推定。五十肩の炎症期と判断。

▼鍼灸施術:棘下筋緊張緩和と肩関節周囲筋の緊張緩和を目的に山正NEOディスポ鍼SPタイプ30mmφ0.14mmで約5mm刺入し10分置鍼

▼経過:施術後、屈曲・外転とも約170度に改善。2診目(3日後):再燃。施術同様。施術後の可動域は屈曲150度、外転110度。動作痛軽減。3診目(2診後2日):症状軽減。4診目(2診目の7日後):再燃して増悪。原因がヨギボーと判明。7診目(4診目の21日後):以後施術週1回、夜間痛、安静時痛減少するも炎症期が終わって硬縮期に入ったと考えられた。数日前から胆石症による呑気症で内服治療中。腹部所見と肩関節の関係が判明。20診目(初診後約6カ月):屈曲・外転とも170度に改善。ADL障害を生じる痛みなし。寛解と判断。

その後:年が明けて雪すかしや仕事量増加に伴い痛み再燃するも可動域は正常、予防のためとして施術を継続し、最終的に9か月間34回の施術を行い略治とした。現在はメンテナンスを目的に月一回施術している。

〇感想:

▼ヨギボーでうたたねや長時間の座位でのデスクワークなど、生活習慣が改善されなければよくなっていかないことが分かった。

▼胆石症による腹筋の緊張と陽陵泉穴のつながりなどが肩関節痛を悪くしている場合がある。

▼半年間の介入は長期であり、自然回復かもしれない。直後効果は毎回あった。

〇おわりに

  • 肩関節痛を訴える2例を提示した
  • 症例1は軽症のうちに寛解させることができた
  • 症例2は単純な肩関節痛に胆石症や生活習慣が強く関与することで悪化したと考えた
  • 私にとって新しい発見があったことは臨床が楽しくなるきっかけになった