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活動報告

第6回 中央学術研修会 「チーム医療につながる」 長谷川尚哉先生 ご講演

 

 

平成28年2月28日(日)、平成27年度 第6回 中央学術研修会が開催されました。

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講師:大磯治療院院長  長谷川尚哉 先生 (社会医療法人社団 三思会 とうめい厚木クリニック統合医療療法科・株式会社 ソクラー・テクノス 代表取締役 院長)

テーマ:「チーム医療につながる~連携の実際とカルテ記載、お手紙マナーを知って 医療機関と仲良くいこう~」

場所: 石川県女性センター

参加者:会員36名 会員外1名

内容:

 鍼灸マッサージ師がチーム医療に入っていき、医療と連携していく(医鍼連携)ためには、医療スタッフとの共通言語を理解し使用することが絶対に必要です。疾患、投薬、検査データへの理解を深めることで、スムーズな連携が可能となります。診療録(施術録)も同様に、共通言語でわかりやすく記録する必要があります。また、そもそも鍼灸がどういうものかを医療関係者に理解していただくために、世界的に科学的研究が行われている現状や、そのエビデンスを提示していくことも重要です。

 鍼灸マッサージがチーム医療に参加するときには、共通言語を理解しているチームの構成員であるということだけではなく、鍼灸マッサージ施術の独自性を発揮してチームに貢献することが可能です。その独自性とは、東洋医学が症状そのものを切り離してみるのではなく、症状を身体で起こっているひとつの表れとして、患者さんの身体全体、そしてその症状が起こった背景をも総合的にとらえる医療であるということです。鍼灸治療では、身体全体をみて治療をするなかで、じっくり患者さんのお話を聞くための時間があります。お話しを聞くことで、家族、仕事、心理状態など、病の背景に潜む本当の要因が浮かび上がることがあります。そのなかには、短い病院の診察時間内では聞くことのできない重要な話が隠れていることも多く、それを医療チームにフィードバックすることは、チームに加わる鍼灸マッサージ師の役割のひとつであり、医療チームからの信頼にも繋がります。

 また、昨今、ポリファーマシー(多剤処方)が問題となっていますが、患者さんは鍼灸マッサージ師に、「実は、薬はもう飲んどらんけど、先生に言えんかったし、またたくさんもらってきたわ」「こっちの先生からも痛み止め出とったわ」「湿布たくさん余っとるし、腰おこした息子にあげたわ」などのお話をしてくださることが多々あります。薬が正しく服用されていないことを医療チームにお伝えすることで、正しい投薬管理につながりますし、医療費の削減にもつながります。

 鍼灸治療中の会話が多様な情報収集につながるということから、鍼灸治療は、“IBM”であると長谷川先生はおっしゃいました。EBM (Evidence-based Medicine)やNBM (Narrative -based Medicine)という言葉がありますが、IBMとは先生の造語であり、Idobatakaigi-based Medicine(井戸端会議に基づく医療)の略称とのことです。(ちなみに長谷川先生は、IBM のスピーチで、MEDプレゼン2015大会において、最優秀アワードを獲得されたそうです。)

 鍼灸マッサージ師が地域で信頼される鍼灸マッサージ師になるために、何が必要でしょうか? 印象に残ったことは、「ガンの罹患率は2人に1人、目の前にいる患者さんの半分がガンになる可能性があるということを本当の意味で理解しているか」というお言葉です。石川県のガン死亡率は? ガンの種類は? 目の前の患者さんの既往歴、家族歴を把握しているか? そして、ガンに限らず、いつもと異なる症状、異なる体表所見や徒手検査所見を見逃さず、精査が必要なときは時期を逃さずに速やかに専門医にご紹介することが、地域で鍼灸マッサージ師がお役に立ち、信頼されて生き残るために、非常に重要なことと理解しました。普段から施術録を自分たちの東洋医学の言葉だけではなく、共通言語でも記録する習慣をつけることや、速やかに紹介できるための地域の病院などの情報収集(これもIBMが役にたちます)、そして書式を作成しておくことも大切です。また、最初に記したことと重複しますが、日々進歩している医科学における共通言語を理解するための地道な努力の積み重ねこそが、地域で信頼される鍼灸マッサージ師として、そして医療チームに加わっていくために必要なことではないでしょうか。

 今すべきことが明確になり、そして勇気づけられる大変素晴らしい御講演でした。

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