Information

活動報告

平成27年度 第5回中央学術研修会「ベビーマッサージの実践とその効果」

image  image (2) image (1)

平成27年度 第5回中央学術研修会「ベビーマッサージの実践とその効果」

 

 11月29日は履正社医療スポーツ専門学校の古田高征先生に「ベビーマッサージの実践とその効果」について講義していただきました。古田先生は(公社)大阪府鍼灸マッサージ師会が作成したベビーマッサージのための安全を担保するためのガイドラインに中心となり作成に関られた先生です。

 昨今乳幼児に対する無資格者の施術過誤で死亡事故が発生しています。また、さまざまな任意団体や新聞などのメディアが主催となってベビーマッサージを行っています。こういった現状を、施術資格を有する私たちがどのようにとらえて、どう行動していったらよいのかということを学ばせていただく機会をいただきました。

 ガイドラインには“小児への手技を行う際にはマッサ―ジテクニックのみではなく、小児領域をはじめとする医療全般の知識を踏まえた施術方法と作用機序、身体に及ぼす影響についての理解がなければ、危険の回避や突発的な乳幼児の変化を見逃し、適切な対応はできない”とあります。私たち有資格者は資格を持つときに医学全般を学び、その有効性も手技療法の適応範囲から禁忌症までを学びます。現在、一般的に行われているベビーマッサージが適切なものなのかどうかや危険性があるものか、健康被害をあたえることはないのかも把握しておくことも仕事の一つではないかと考えます。悲しい死亡事故が起こらないように、適切なものを普及させていくことも必要であると思います。

 ベビーマッサージを普及させたい意図の一つとして、児童虐待が増え続けているという現状があります。ベビーマッサージは看護師領域では「赤ちゃんケア」「タッチケア」という形で普及され、鍼灸師の一派ではスキンタッチという形で浸透しつつあります。安全で適切に浸透していけばよい効果も期待されます。

 ベビーマッサージの効果としては、気分が安定する、体重の増加・免疫機能の改善・ストレスホルモンの減少、自立機能が最適に働き消化吸収機能が向上する可能性があると言われています。最近ではマッサージをすることによって脳から放出されるオキシトシンというホルモンが信頼や安心を感じる作用があることが分かってきています。また、ベビーマッサージの母子双方のストレス反応に及ぼす効果に関する研究では、ベビーマッサージはストレス反応の減少や体温の上昇、脈拍・血圧の安定が母子ともにみられるという結果が出ています(奥村 ゆかり 神戸大学大学院保健学研究科)。母親が子供のことを大切に思っていても、育児にはストレスを感じることがあります。ベビーマッサージをすること母親側(家族)にもよい効果があるということがわかってきています。また、こどもが育てやすくなることで、夫のサポートをうけやすくなったというデータもご紹介いただきました。母親の育児不安が軽減し、自信を取り戻すことにつながることが望まれます。

 母親の育児不安の要因としては①子供との接触経験や育児経験の不足②出産に伴う生活の変化によるストレス③子育て力の不足④地域からの孤立、があると考えられます(東洋療法学校協会編「社会あはき学」)。ベビーマッサージは①の接触経験になっていくと思われます。
 ベビーマッサージはマズローの欲求階層説でいうとビラミッドの中央にあたる“所属・愛情欲求”にあたります。生活に不可欠な“生理的欲求”と生命の維持に関わる“安全欲求”の上にあり、愛情に満たされて価値のある存在だと認められる“承認欲求”や自らを成長させようとする“自己実現欲求”に向かうことができます(『マズローの心理学』産業能率大学出版)。幼少期においてもこの愛情を確認するという手段が大切で、その後の生き方にも影響を及ぼしていくと考えられています。

 ベビーマッサージを普及させる方法としては方法にこだわらず、様々な形があってもよいと提案されていました。また、マッサージだけでなく子育て相談の場として提供したり、医療育児の関連知識をお伝えする場にするとよいのではとのことでした。医療人としての信頼を高め、知らない事を「知らない」という勇気が大切なポイントであると

お話ししてくださいました。
 この研修会を受講して、医学知識を持ち医療資格を有する私たちができるベビーマッサージを普及啓発をしていきたいと思いました。この石川県でもマッサージ師によるベビーマッサージの普及をいうものは知る限りなく、石川版ベビーマッサージを提供していきたいと思いました。そのことが母子を取り巻く環境の改善につながることや、助産師・看護師さんとの連携、鍼灸マッサージの普及につながることを願いたいと思います。

 会員・会員外・養成学校生 36名が参加してくださいました。
(相川 葵)

日時:平成27年11月29日(日)13:00~15:00
場所:白山市松任文化会館401号室
住所: 〒924-0872 石川県白山市古城町2(昨年と同じ所)
電話:076-276-5611
講師:履正社医療スポーツ専門学校鍼灸学科 古田高征先生
演題:ベビーマッサージの安全ガイドライン(仮題)
単位:2
参加資格:有資格者と養成学校学生