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『お産の産む力をサポートする東洋医学』辻内敬子先生講義(石川県看護協会研修)に参加して

『お産の産む力をサポートする東洋医学 知ろう・使おう』
(平成29年度石川県看護協会研修 金沢医科大学看護学部3号棟)
講師:辻内敬子先生(せりえ鍼灸室)

平成29年8月26日、辻内敬子先生のご厚意により、石川県看護協会研修における辻内先生のご講義に、本会より常磐会長以下2名が参加させていただきました。

辻内先生は、周知の通り周産期鍼灸の第一人者であり、本会でも平成26年11月に「周産期のマイナートラブルに関する鍼灸治療とリスクマネジメントについて~鍼灸マッサージの不適応を鑑別するための症状、訴えを考える~」というテーマでご講演いただきました。

冒頭で、今回辻内先生をお招きされた金城大学教授の柳原眞知子先生から、助産師の仕事に含まれる妊産婦さんの“身体をととのえる”ということは、東洋医学と共通するところが多く、妊産婦さんの身体をととのえることが、良いお産につながる、というお言葉がありました。また、今後鍼灸師と何らかの形で交流を持っていけたらという、ありがたいお言葉もいただきました。

午前中は東洋医学、鍼灸、つぼ療法に対する講義で、東洋医学が全人的医療であるということや、東洋医学の理論である気血水や陰陽五行のお話、つぼ刺激と体性内臓反射のお話など大変わかりやすく東洋医学をご紹介されました。

また、助産に活かすつぼ療法の意義として、妊婦のマイナートラブルの大元ともいえる冷えに気づき、つぼ刺激でアプローチすることによって、他の多彩なマイナートラブルの緩和や出産所要時間の短縮,出血量の減少、産後の疲労回復や母乳分泌改善の効果が期待できるということもお伝えいただきました。

具体的なつぼの名前もあげられ、特に有名な三陰交や合谷のつぼはほとんどの助産師さんがご存知でした。ただ、実際に鍼灸を受けたことがある助産師さんは1名のみでした。参加者はおそらく40名以上いらっしゃいましたので、鍼灸の受療率が3ー5%程度という現状では妥当な人数なのかもしれません。

お話させていただいたある助産師さんは、まずどこにいけばよいかわからない、どんな人がやっていて何をされるのかという不安がある、とおっしゃっていました。これは何としても私たちが改善していく課題であると感じました。

辻内先生は助産師さんに、せっかくつぼのことを知っていただいたら、明日からぜひ臨床で使っていただきたいとおっしゃっていました。自信を持ってつぼ療法を使っていただくには、助産師さんに鍼灸を体感していただき良さをわかっていただく必要があります。つぼが効くか効かないかわからないと思ってするのと、この場所の反応が出ているこのつぼ、と確信を持って取穴してするのでは効き方が違います。まずは助産師さんをはじめとした医療関係者の方々に鍼灸の良さを知っていただくことと、それと共に、必要なときに信頼されて妊婦さんをご紹介いただけるように、研鑽を深めていく必要があると痛感しました。

午後からは、妊婦さんへの生活指導とつぼの取穴が行われました。

生活指導では身体の使い方、歩き方など日常生活のなかで気をつけて正しく訓練することで、筋力がつきおなかの張りを改善したり良いお産につながるというお話とともに、実際に皆でトレーニングを行いました。思いのほかどの動作もきつく、妊婦さんがいかに意識的にしっかりと筋力・体力をつける必要があるかということを実感しました。

つぼの取穴は、辻内先生とともに私たちもお手伝いさせていただき、お一人お一人のつぼの位置を確認させていただきました。

最後に二人一組になって肩から上肢、背腰部をゆっくりと撫でさするマッサージを行いました。互いに、「気持ちよい」、「ほっとする」、「ありがとう」などと思ったことを伝え合うことも大事だということも教えていただきました。それがお産の介助のときに、妊婦さんが手を払い除けるのではなく、今こうしてほしいという気持ちを伝える訓練にもなるので、ぜひご自宅でも旦那さんと互いにしあってもらってくださいとのことでした。

助産師さんも、人に触れてもらうということが心地よいということや、自分の今の身体を感じて知るきっかけになるということを再確認されていらっしゃいました。

今回、このような貴重な機会をいただきましたことを、辻内先生、柳原先生、看護協会の皆様に厚くお礼を申し上げます。この機会が石川県における周産期医療と鍼灸マッサージとの連携のきっかけになるよう、会としてもますます学びを深めて体制を整えて参ります。(報 告:松田鍼灸治療院 松田 有里)

 

dav