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プロ野球選手(読売巨人軍 投手)の肩の不調がトレーナーによる「はり治療」ミスの可能性という報道を受けて~鍼灸学会・業界の対応~

 

9月10日を始まりとして、報道各機関より読売巨人軍 澤村祐一投手の『肩の不調の原因はトレーナーによる鍼治療のミスで、長胸神経麻痺が原因となり前鋸筋機能障害を起こしていた可能性が高い』という報道が流れました。報道等では肩の痛みや不調、医師の診断等の経緯が掲載されていましたが、これだけでは前後の因果関係が明らかではなく、『はり治療』に対して、国民の皆様にいらぬ誤解と不安、心配を与えてしまう恐れがあります。不透明な部分の明確な事実関係を明らかにして、事実であれば今後の事故防止に、さらに事実に反しているのであれば国民の皆様が抱いた誤解を解かなければなりません。

この問題に対して早急に対処すべく(公社)全日本鍼灸学会、日本伝統鍼灸学会、(公社)日本鍼灸師会、(公社)全日本鍼灸マッサージ師会、(公社)日本あん摩マッサージ指圧師会、(公社)全国病院理学療法協会、(社福)日本盲人会連合会(公社)東洋療法学校協会、日本理療科教員連盟の関係9団体が連名で読売巨人軍に対しまして、以下の公開質問状を送付しました。

この問題の現況におきましては情報が錯綜している状態であり、事実がはっきりしない状態です。プロ野球を牽引されてきた読売巨人軍におきましては、事実関係の説明とともに、情報公開をできる範囲において、国民の皆様に対しまして真摯で明確な回答をお願いしたいところであり、また、その責任があるのではないでしょうか。

(公社)石川県鍼灸マッサージ師会では鍼灸マッサージ施術による有害事象が起きないように研修を実施しています。さらに会員全員が損害賠償保険へ加入し、臨床等における事故防止を常に認識し施術にあたっております。その点におきましてはご安心いただきたく思います。

『はり治療』を受けておられる皆様、あるいは、これから受けようとしている皆様におかれましては、誤解による不安や心配を持たれることがございませんようお願い申し上げます。また、ご質問等がございましたら本会事務所までご連絡ください。

 〈以下 質問状〉

 

平成29年9月21日

株式会社 読売巨人軍

代表取締役社長 久保 博 殿

 

はり治療による長胸神経麻痺に関する報道についての照会

謹啓

秋涼の候 貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます

 

公益社団法人 全日本鍼灸学会、日本伝統鍼灸学会、公益財団法人 日本鍼灸師会、公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会、公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会、公益社団法人 全国病院理学療法協会、社会福祉法人 日本盲人会連合、公益社団法人 東洋療法学校協会、日本理学療法教員連盟は、国家資格である『はり師』『きゅう師』いわっゆる鍼灸師が所属する団体であり、鍼灸学術の振興ひいては国民に安全で安心な治療を提供することを目的とするものであります。

去る9月10日(日)に、貴社所属のトレーナーの医療過誤に関する記事が複数の新聞社によって伝えられました。記事では、はり治療によって長胸神経麻痺が発生したとのことですが、業界全体が大変な驚きをもって報道を受け止めているところであります。また、鍼灸師のみならず、一般の患者ならびにマスメディアからも多数問い合わせが届いており、その多くは一般的なはり治療でそのような医療事故は起こりえるものなのか、また、今後の事故を防止するためにも施術内容ならびに診断に至った経緯を明らかにして欲しいというものであります。

本報道では、現在、はり治療を受けておられる患者とそのご家族、これから治療をうけようと考えている方、治療にあたっている鍼灸師ならびに関係者に大きな不安を与えております。我々鍼灸団体としましては、事件の経緯を明らかにすることによって、上記問い合わせに対して可能な限り正確な説明を行い、鍼灸師により適切な安全対策を講じさせ、今回の報道で生じたはり治療に対する国民の不安を軽減したいと考えております。

つきましては、施術から診断に至るまでの詳細な経緯について別添の質問状(2枚)にご回答いただきますようお願い申し上げます。また可能でしたら担当医師、鍼灸師に直接お話が伺えればと考えております。ご多用のところ大変恐縮ですが、本照会の趣旨をご理解いただきご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。なお、本照会状は、報道各機関にも公開させて頂くこと申し添えます。

末筆ながら、貴社の益々のご発展を祈念したします。

謹白

公益社団法人 全日本鍼灸学会        会長 久光 正

日本伝統鍼灸学会              会長 形井 秀一

公益社団法人 日本鍼灸師会         会長 中野 弥和

公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会   会長 伊藤 久夫

公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会 会長 安田 和正

社会福祉法人 日本盲人会連合        会長 竹下 義樹

公益社団法人 全国病院理学療法協会     会長 平野 五十男

公益社団法人 東洋療法学校協会       会長 坂本 歩

日本理療科教員連盟             会長 栗原 勝美

 

平成29年9月21日

質問状①

本件におきまして、診察ならびに診断されました医師の先生にお聞き致します。

Q1. 報道によれば長胸神経麻痺とありますが、本件の正確な診断名とその理由(所見)をお聞かせください。

Q2. 報道によれば、はり治療が長胸神経麻痺の原因とありますが、これは事実でしょうか?もしも事実であるならば、はり治療を原因とした理由(因果関係)と他の原因を除外した理由をお聞かせください。また、はり治療前から長胸神経麻痺を疑う所見がなかったかお教えください。

Q3.患者の転帰についてお聞かせください

Q4. もしはり治療が長胸神経麻痺の原因であると考えであるならば、どのような安全対策を施せば、今回の事故を避けることができたとお考えでしょうか?ご意見をお聞かせ下さい。

Q5. 上記に加えて、本件に対するご意見をご感想をお聞かせください。

 

平成29年9月21日

質問状②

本件におきまして、はり治療を行われたトレーナーの先生にお聞き致します。

Q1 本件に関するはり治療の詳細(主訴と治療目的、使用鍼のサイズ、刺鍼部位・方向・深度・強度、等)についてお教え下さい

Q2 報道によれば、はり治療が長胸神経麻痺の原因とありましたが、刺鍼時あるいは刺鍼後に神経を障害したことを 示唆する現象(強い鍼響、痛み、シビレ、筋の単縮、等)はございましたか?

Q3 上記の質問を踏まえて、はり治療が今回の原因とお考えでしょうか?

  もしそうであるならば、どのような施術行為が原因であったか、どうすればこれを防ぐことができたとお考えで  しょうか?ご意見をお聞かせください。

Q4 上記に加えて、本件に対するご意見ご感想をお聞かせください

〈以上、質問状、医道の日本社 HPより転載〉

(文責 総務局長:田中良和)